ハリー・ポッターと死の秘宝(第24章後半)

「僕は知るべきだった。でも、求めるべきではなかったのですね?」「だからあなたは、何もかも。これほどまでに難しくしたのですね? 自分で悟る時間をかけさせるために、そうなさったのですね?」
ハリーは心の中でダンブルドアに呼びかけた。何のことかは書かれていないが、死の秘宝を指しているのだろう。とくに、ニワトコの杖を。

ハリーはビルに、グリップフックと話したいと頼んだ。ビルはハリーたち三人を自分の寝室に案内し、グリップフックを連れてきてくれた。

レストレンジ家の金庫に入りたい。そう言ったハリーへのグリップフックの返事は、当然ながら「不可能です」だった。
自分の利益のために何か盗ろうととしているわけではない、とハリーが言うと、グリップフックの態度が少し変わった。屋敷妖精をていねいに埋葬したり、ゴブリンを助け出したりしたハリーは、魔法使いとしては変わっているとグリップフックは感じていたのだ。魔法省の泉の像が表現しているとおり、ゴブリンや妖精は魔法使いの下に位置するというのが、魔法使いたちの一般的な認識だった。
少しやわらいだグリップフックの心をさらに動かしたのが、ハーマイオニーだった。ハーマイオニーは、ハリーがドビーを解放したこと、自分たちが屋敷妖精解放を目指したことを話し、「『例のあの人』を負かしたいという気持ちが、私たち以上に強い人なんかいないわ!」と言った。

「僕たちを助けてくれる? 君だけが頼りなんだ」というハリーに、グリップフックは「考えてみましょう」と答えた。この時すでに、交換条件を考えていたのかもしれない。

部屋を出てからロンは「嫌なチビ」「僕たちがやきもきするのを、楽しんでいやがる」とつぶやいたが、このせりふもロンの精神的幼さを表していると思う。グリップフックの立場にたてば、ハリーの依頼は断って当然なのだから。

話し終えて部屋を出てから、ハーマイオニーが言った。「レストレンジ家の金庫に、分霊箱が一つある。そういうことなの?」
マルフォイ家で、グリフィンドールの剣を見たベラトリックスの反応から、ハリーはそう推理したのだ。ハリーがハーマイオニーよりも先に正しい推理をするのは珍しい。

三人はオリバンダーのいる部屋を訪ねた。
ハリーはまず自分の折れた杖を見せ、直せるかと尋ねたが、「ここまで破壊された杖は、わしの知っているどんな方法でも直せない」という答えが返ってきた。
次に、マルフォイ邸でドラコからうばった二本の杖を見せた。一本はドラコ、もう一本はベラトリックスの杖だとオリバンダーは言う。オリバンダーは「賢者の石」で言ったとおり、自分が売った杖はすべて覚えていたのだ。
杖を勝ち取ったら、杖の忠誠心は移る。そのことを、専門家であるオリバンダーを通してハリーは初めて知った。
そして、話はニワトコの杖のことになる。オリバンダーの話から、ヴォルデモートがニワトコの杖を求めていると、ハリーははっきり知った。そして、その杖がグレゴロビッチの手にあることをヴォルデモートに教えたのがオリバンダーだということも確認できた。

ここでオリバンダーが「例のあの人」ではなく「闇の帝王」という言葉を使っているのは興味深い。拉致されたり拷問されたりしたにもかかわらず、彼はヴォルデモートに畏敬の念を抱いているのだろう。

ハリーとヴォルデモートの心がまたつながった。ヴォルデモートはホグワーツの校門にいた。
「ランプが揺れながら校門に近づいてくるのが見えた」と書かれている。ランプの主は、ヴォルデモートを迎えにきたスネイプだ。
湖の岸でスネイプを返し、ヴォルデモートは自分に目くらまし術をかけた。彼には透明マントなど不要なのだ。杖をあげ、墓をまっぷたつに割って、ダンブルドアの亡骸の腕から杖を取った。
ここで「杖の先から火花が吹き出し、最後の持ち主の亡骸に降りかかった。杖はついに、新しい主人に仕える準備ができたのだ」と書かれているが、これはヴォルデモートの主観なのだから、地の文ではなくヴォルデモートのせりふにするべきだ。客観的には、最後の主人はダンブルドアではないし、この瞬間に主人が変わったわけでもない。マルフォイの館の場面で、すでに主人は代わっていたのだから。

一方ハリーは、ニワトコの杖がホグワーツにあることを、ロンとハーマイオニーに話していた。