ハリー・ポッターと死の秘宝(第25章前半)

前章でハリーは、ヴォルデモートがニワトコの杖を取りに行くのを察していながら、それを止めに行かなかった。その時は正しい選択をしたと思ったのだが、それから数日間、はたしてそれで良かったのかと迷いが生じた。ロンは最強の杖にこだわり、ハーマイオニーは逆にハリーの選択を支持した。

ロンは、銀色の雌鹿とハリーが鏡の中に見たブルーの目が、ダンブルドアが生きている可能性を示しているとさえ言った。
ブルーの目はアバーフォースの目だったと28章でわかるが、わたしは28章を読むまで、校長室にあるダンブルドア肖像画の目だと思っていた。

ハリーたちがビルの家に着いて数日後、グリップフックがハリーたちを呼んだ。
ハリーたちを助けることにした、ただし代償としてグリフィンドールの剣をもらいたい、というのだ。
「それはできない」とハリーが答えた。
ここでロンが「レストレンジはきっと、ごっそりいろんな物を持ってる。僕たちが金庫に入ったら、君は好きなものを取れば良い」と言ったのにはあきれた。ロンの思考が幼稚なことは何度も描写されているが、ここまでアホだったとは。というより、ここまでロンをアホに描く必要があるのか。
当然ながら、グリップフックは怒りで真っ赤になった。

ここで、グリフィンドールの剣の帰属について、ハリーたちとグリップフックの認識の違いが明らかになる。
ハリーたちは、剣はゴドリック・グリフィンドールの持ち物で、グリフィンドール生に権利があると思っている。しかしグリップフックは、もともとラグヌック一世のものだったのを、グリフィンドールが奪ったのだと言う。千年も前のできごとだから、今さら真相はわからないと思うのだが。

グリフィンドールの剣と交換なら、レストレンジ家の金庫に入る手伝いをする。それが駄目なら、この話はなかったことにする。それが、グリップフックの返事だった。
ハリー視点の物語だから、グリップフックが何を考えたのかはわからない。おそらくグリップフックにとっては、グリフィンドールの剣を取り返すことがゴブリン族にとっていちばん大切なことで、そのためにはグリンゴッツの金庫破りが起こってもやむを得ないと考えたのだろう。

グリップフックの部屋を出てから、三人は議論を始めたが、良い案は出ない。結局ハリーは「グリップフックに剣を渡すと言おう。ただ、いつ渡すかははっきりと言わないようにする」と決めた。
ロンは大賛成だったが、ハーマイオニーには気に入らない案だった。

剣を渡す、とグリップフックに返事をしてから数日間、三人とグリップフックは計画を練るのに時間を過ごした。