ハリー・ポッターと賢者の石 第14章

もともとの章タイトルは「ノルウェー・リッジバックのノーバート」。日本語訳では「ノルウェー・ドラゴンのノーバート」となっているが、この程度の改変は許されるだろう。第6章の中で cats of every colour を「色とりどりの猫」というおかしな日本語にしたのに比べたら、ずっとマシだ。

ハリーたち3人が図書館で試験勉強をしていると、ハグリッドがいた。何となく挙動がおかしい。ハグリッドがいた場所をロンが見ると、ドラゴンに関する本がある書棚だった。

3人はハグリッドの小屋を訪ねて、賢者の石を誰が守っているかを聞き出す。ハーマイオニーがハグリッドの自尊心をくすぐって秘密をしゃべらせる場面では、ハーマイオニーの巧みさとハグリッドの子供っぽさがよくわかる。
グリンゴッツから石が盗まれそうになったためホグワーツへ移したこと、石を守るために魔法をかけたのがスプラウトフリットウィック、マクゴナガル、クィレル、ダンブルドア、スネイプだということを、ハグリッドは話してしまう。
ここで、ハグリッドだけがフラッフィーをおとなしくさせられるのかと聞かれて「俺とダンブルドア先生以外は誰一人として知らん」と答えている。ダンブルドアだけが石を守る魔法の全容を知っていて、他の教師はお互いに詳しいことを知らないという設定なのだろうか。

そんな話をしている時、暖炉の中に黒い大きな卵があるのにハリーが気づく。前夜、かけに勝って手にいれたのだという。
何日かして、ハグリッドから「いよいよ孵るぞ」という手紙がくる。ここの日本語訳だが、「孵」という漢字を使わないでほしかった。ハグリッドは物知りだが、その知識は偏っている。もしハグリッドが日本で暮らしていたとしても、こういう非日常的な漢字を使うとは思えない。ただし、only two words を「たった一行」と意訳したのはうまいと思う。

このままハグリッドの小屋で飼い続けるわけにはいかない。そこで、ロンの兄チャーリーに預けることになるのだが、この案を思いつくの時のハリーのせりふが、わたしには不満だ。
「・・・面倒を見て、自然に帰してくれるよ」
チャーリーを思いつくのはハリーでいいが、せりふのこの部分は、ロンが言うべきだろう。魔法界のこともドラゴンのこともよく知らないはずのハリーが、「チャーリーが面倒を見て自然に帰してくれる」と断言するのは変だ。ロンなら、それが可能かどうかを知っていても不思議はない。

ロンがドラゴンにかまれて入院したため、ハリーとハーマイオニーはふたりでドラゴンを塔のいちばん上の階まで運ぶ。そこでチャーリーの友人たちにドラゴンを引き渡すのだ。
この件をかぎつけたマルフォイが塔に先回りしたが、マクゴナガルに見つかって罰則を受ける。マルフォイは本当のことを言っているが、マクゴナガルは信じない。ここでのマルフォイは、自業自得とはいえ、ちょっとかわいそうだ。(もっとかわいそうなのは、次の章のネビルだけど。)マクゴナガル先生は開心術を使わないのかな?

無事ドラゴンを引き渡し、ほっとしたふたりは透明マントを塔の上に忘れてきてしまう。そして、降りてきたところをフィルチに見つかる。