ハリー・ポッターと秘密の部屋 第5章(後半)

車から放り出されたハリーとロンは、スネイプの部屋である地下室に連れて行かれる。
日本語訳は「地下牢」となっているが、適切な訳だとは思わない。dungeon はたしかに地下牢を意味する単語だが、牢と関係のない地下室をさすこともある。この物語では、地下室の方がいいと思う。

いったん出て行ったスネイプは、すぐにマクゴナガルを連れて戻ってくる。マクゴナガルはふたりの説明を聞いて「なぜ、ふくろう便を送らなかったのですか」と聞く。
もしふたりが、どうしたらいいかとあれこれ思案していたなら、ふくろう便もきっと思いついただろう。しかしふたりは、どうしたらいいか考える前に「車で飛んで行く」を最初に思いつき、それがとても素敵なことだと思い込んだ。車が消えているのを知った時にアーサーやモリーがどれほど心配するか、慣れない車を運転することがどれだけみんなに迷惑をかけるか、考えもしなかったのだ。

ダンブルドアもやってくる。校長自ら事情を問いただしに来ることは、ふたりがやったことの重大さを示しているのだろう。何しろマグルに空飛ぶ車を目撃され、夕刊にもそれが載ったのだから。
一度は退学を覚悟したふたりだが、退学しなくて済みそうだとなると、ハリーがマクゴナガルに尋ねる。「まだ新学期は始まっていなかったのだから、グリフィンドールは減点されないはずですよね」
わたしはこのせりふにかなり腹が立った。何をのんきなことを!と思った。
マグルに見られたことでアーサーの立場が悪くなったことは、スネイプのせりふで明確にわかったはずじゃないのか。車で行こうと最初に言い出したのはロンの方だけど、ハリーもロンと同じように調子に乗った。それを反省しないで、減点を逃れることを考えているなんて。

ふたりは地下室で食事をし、終わったらまっすぐ寮に行くように言われる。
「マクゴナガル先生は僕たちが目立ってはいけないと考えたんだ」というロンの推測は正しいと思う。この年頃のこどもたちには、規則を破って目立つことを「かっこいい」と思う傾向がある。
案の定、グリフィンドール寮に着いたふたりはみんなに英雄扱いされる。ひややかな目を向けたのは、ハーマイオニーとパーシーだけだった。
ずいぶん先になってわかることだが、学生時代のスネイプは闇の魔術に傾倒していった。それがかっこよく思え、リリーの気をひくことができると考えたからじゃないだろうか。