ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第5章前半)
9月1日がやってきた。
魔法省の車が2台、「漏れ鍋」にハリーを迎えにくる。
「胡散臭い魔法使いが運転していた」と書かれているが、なんだか不自然な描写だ。原文のfurtive-lookingを正確にどう訳せばいいのかわからないが、「目立たないふるまいの」ぐらいだろうか?
ハリー、ハーマイオニー、それにウィーズリー家全員が乗り込んだ。ナイトバスほどではないが、この自動車も、普通なら通り抜けられないところを通ったり、信号待ちの列を飛び越していちばん前に並んだりと、魔法界の装置らしいふるまいをする。
「秘密の部屋」でホグワーツ列車を使わなかったハリーとロンにとって、三年生ではあっても二度目の9と4分の3番線だ。今回は無事壁を通り抜けて列車へ。
3人組が入ったコンパートメントには見知らぬ大人がひとり眠っていた。若いのに白髪まじりで、みすぼらしい服装をしている。鞄に「Professor R. J. Lupin」と名前が書かれている。
この場面ではまだわからないが、ルーピンは人狼であるために就職できなかったという。つまり、過去に教師をした経験はないと思われる。これから赴任するのに、鞄に Professor と書いてあるのは気が早すぎないか?しかも「はがれかけた文字が押してあった」というから、ますます不自然だ。
ところで、魔法族はいろいろなものを杖の一振りで出せるのに、洋服は出せないのだろうか?
生徒たちは制服を洋装店で買っているし、「炎のゴブレット」でロンが着たドレスローブは古着で、ロンは不満たらたらだった。洋服は魔法で出せないのかもしれない。もし魔法で出せるなら、ルーピンはもっとマシないでたちで学校へ来たはずだし、モリーはロンのためにお古を買わずに済んだはずだ。
ハリーはロンとハーマイオニーに、昨夜の立ち聞きを報告する。脱獄したブラックの狙いはハリーだと。
そのあと話題はホグズミートのことになる。お菓子のことしか頭にない食いしん坊ロンと、史跡に深い関心を持っているハーマイオニーとは、まったく対照的だ。
社内販売のコンパートメントが来て、ハーマイオニーがルーピンを起こそうとするが、ルーピンは身じろぎもしない。販売カートを押してきた魔女は「目を覚ました時お腹がすいているようなら、わたしは一番前の運転手のところにいますからね」と言う。この列車はちゃんと運転手がいるのだ。車掌は出てこないけれど。
この運転手、結局物語には一度も登場しなかった。