ハリー・ポッターと謎のプリンス(第25章前半)

ハリーとジニーはおおっぴらにつき合うようになった。ハリーはとても幸せだった。
6月に入り、ジニーはOWL試験の準備で忙しくなったが、それでも時間を見つけてふたりはデートしていた。

そんなある日、ハーマイオニーはプリンスの教科書のことを蒸し返してきた。プリンスの教科書自体は、必要の部屋に隠したままだったが。
ハーマイオニーが見せた古い新聞記事には、「アイリーン・プリンス。ホグワーツ・ゴブストーンチームのキャプテン」と書かれていた。
ゴブストーンというゲームの名前は、「アズカバンの囚人」4章に始まって何度かでてくる。しかし、実際にこのゲームをしている描写はない。クィディッチのような屋外のスポーツではなく、チェスのような室内ゲームだということはなんとなくわかるが。
このアイリーン・プリンスが例の教科書の主ではないかと、ハーマイオニーは推察する。しかしハリーは何の根拠もなく「プリンスは男の子だ。あの教科書とは何の関係もない」と言い張る。
あとでわかるが、どちらも半分合って、半分間違っていた。

そこへ、ジミー・ピークスという生徒が、ダンブルドアからの手紙を届けにきた。校長室に来てほしいと書かれていた。

「ハリーはすぐに談話室を出て、八階の廊下をできるだけ急いだ」と書かれている。グリフィンドールの談話室って、何階にあるのだろう? 高いところだということだけは、あちこちの記述でわかっているけれど。

途中で、トレローニーの悲鳴が聞こえ、ハリーは声のする方に向かって走った。そこは「必要の部屋」の前で、トレローニーは何かを隠そうとして必要の部屋に入ったが、先客がいて放り出されたのだという。中にいたのは誰かわからないが、歓声をあげていたという。
ハリーは、中で歓声をあげていたのがドラコ・マルフォイだと確信した。

ハリーはこのことをダンブルドアに報告するように勧める。トレローニーのためを考えての発言ではあるまい。ドラコが何を喜んでいるのか知りたい、この機会にドラコをとっちめたいというのが動機だ。
「あたくしがそばにいることの価値を評価なさらない方に、無理にご一緒願うようなあたくしではございませんわ。ダンブルドアが、トランプ占いの警告を無視なさるおつもりなのでしたら…」トレローニーはそう言って、トランプを手に「稲妻に打たれた塔」「災難。大惨事。刻々と近づいてくる」とつぶやく。「何度も何度も、どんな並べ方をしても」と言っているから、いつものでたらめ占いではなさそうだ。

トレローニーの占いは、どこまでが本当の占いで(当たっているかどうかは別にして)どこからが口から出まかせなのか、よくわからない。ほとんどが出まかせのようにも思える。
この時の「稲妻に打たれた塔」は、27章のダンブルドアの死を予告していることは間違いない。原作者はこのことばを27章の章タイトルにしているのだから。
ただ、この占いが本当だとわかったところで、表現が抽象的だから、どう備えていいかわからないけれども。

ハリーはトレローニーを誘って、いっしょに校長室へ向かった。
トレローニーは、自分がこれだけ長くホグワーツで教えているのは、ダンブルドアがトレローニーの才能を高く評価しているからだと言い、初めてダンブルドアに会って面接を受けた時のことを話し始めた。

[追記 2018,11,6]
日本語訳で「トランプ」となっている単語は、原著では card だ。
「稲妻に撃たれた塔」は、タロットカードの大アルカナの図柄のひとつ。これを「トランプ」と訳すのはまずい。