ハリー・ポッターと秘密の部屋(第17章前半)

たどりついた「秘密の部屋」は、細長い形の、天井の高い部屋だった。
石の柱が何本もそびえ、天井はやみに吸い込まれて見えない。柱が「影を落としていた」と書かれているから、どこかに光源はあるのだろう。
柱の間を進んでいくと、巨大な石像があった。「年老いた猿のような顔に、細長いあごひげ」と描写されている。スリザリンの像だとあとでわかるが、その像の足もとにジニーが倒れていた。
 
そこへ日記の中にいた、あのトム・リドルが現れる。
「曇りガラスのむこうにいるかのように、輪郭が妙にぼやけている」と書かれている。
日記から抜け出した記憶、というのがこの巻での説明だ。これがヴォルデモートの魂の一部だとわかるのは「謎のプリンス」の巻になってからである。
 
ジニーはこの日記に、自分の思いを何カ月も書き込んでいた。すると、日記に返事が現れた。ハリーと日記のトムとやりとりしたように。ジニーが心理的に近づきすぎたため、ヴォルデモートはジニーの心を乗っ取り、ジニーをあやつることができた。秘密の部屋を開けて猫や生徒たちを襲った実行犯はジニーだった。
トイレに日記が捨てられていた理由も、ハリーの寝室が荒らされて日記だけがなくなった理由も、ここでやっとわかる。
それにしても、ジニーは誰にも目撃されなかったのだろうか?
 
「死の秘宝」第6章で、ハーマイオニーが分霊箱のことを説明するくだりがある。誰かが分霊箱に感情的に近づきすぎると、魂はその人の中に出入りできると。
それを読んでから改めて「秘密の部屋」を読むと、より深く理解できるし、原作者がいかに綿密に物語を組み立てていたかもよくわかる。
 
リドルの話はおもにジニーに関してだが、他の人物の興味深い情報にも触れている。
リドルの話によると、ハグリッドは「一週間おきに問題をおこす生徒だ。狼人間の仔をベッドの下で育てようとしたり、こっそり抜け出して『禁じられた森』に行ってトロールと相撲をとったり」。
また、当時ダンブルドアが変身術の教授であったことも、ここでわかる。