ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第23章前半)ゴブレット(第23章後半)

クリスマスだからとハメをはずすのは、生きた人間ばかりではないようだ。肖像画に描かれた人物も、絵の中でクリスマスを祝う。
「『太った婦人』は下の階から来た友人のバイオレットといっしょに額に納まり、二人ともほろ酔い機嫌だった。絵の下のほうに、空になったウィスキー・ボンボンの箱がたくさん散らばっていた」と書かれている。
ストーリーに直接関係はないけれど、魔法界に関するこんな描写は楽しい。

談話室は、いつもの黒いローブではなく色とりどりのドレスローブを来た生徒たちでいっぱいだった。パーバティが黒髪だということは、ここで初めて描写されている。姓がインド系だから、アジア人だということは最初から想像がつくのだが。
ロンのパートナーのパドマ・パチルは寮が違うので、玄関ホールで待っていた。ロンはパドマをろくに見ず、ハーマイオニーばかり気にしている。あまりに露骨で、読んでいてあきれた。

大広間に来ると、ビクトール・クラムの相手はハーマイオニーだった。
ハリーとロンだけでなく、他の生徒もびっくりしてこのカップルを見ている。ヘアスタイルが違うことと、ドレスアップしていることで、ハーマイオニーがまったく別人に見えたのだ。

テーブルの上にはメニューが置かれている。そして、自分の皿に向かって料理の名前を言うと、その料理が出現する。いつもの食事とは違うやり方だった。
階下の厨房では、屋敷妖精が走り回っているのだろうか。

ハーマイオニーは熱心にクラムと話している。クラムが自分の学校の話を始めると、カルカロフがクラムをさえぎった。それ以上話すと、ダームストラングの具体的な場所がわかってしまうというのだ。
このときダンブルドアが「今朝、見たこともない部屋に迷い込んだ」という話をする。これが「不死鳥の騎士団」以降の巻に出てくる「必要の部屋」の存在にふれた初めての記述になる。

食事がひととおり終わると、ステージが設けられ、バンド「妖女シスターズ」が登場した。このバンドが何人構成なのか、どんな楽器を使っているのか、楽器の演奏に魔法を使うのかどうかなどが書かれていないのは残念だ。魔法界の音楽がマグルの音楽とどう違うのか知りたいのに。
バンドに合わせてダンスが始まった。ハリーはほとんどパーバティにリードされていた。これは無理もないことで、ハリーはダンスを習ったことなどないだろう。

ロンは、ハーマイオニーが敵と仲良くしていると彼女をなじる。
これは明らかに矛盾した言い方だ。第一の課題が終わったあとの時期だが、21章でロンはクラムのサインをもらおうとしていた。急にクラムを敵だと言い始めたのは、単なるヤキモチが動機だと誰にでもわかる。わかっていないのはロン本人だけだ。

クラムがしょっちゅう図書館に来たのは、実はハーマイオニーと話をしたかったからだ。そして、ダンスのパートナーに申し込んだ。
ハーマイオニーのどこが魅力だったのだろう。クラムはハンサムでもないしスタイルもよくないようだが、人気者のスポーツ選手で、どんな女の子でも簡単に誘えたはずだ。現に生徒の中にもファンがたくさんいる。クラムを特別扱いしないハーマイオニーが、逆に新鮮に見えたのだろうか。

ロンとハリーはパーティを抜け出し、玄関ホールから外へ出た。
そこでスネイプとカルカロフの会話を偶然耳にする。ふたりがファーストネームで呼び合っていることをハリーは奇妙に思う。理由がわかるのは30章のペンシーブの場面だ。

さらに歩くと、今度はハグリッドとマダム・マクシームがベンチに座って話しているのを見た。この場面にさりげなく出てくるコガネムシは、リータ・スキーターが化けているのだが、それがわかるのは37章だ。
「おふくろは、イギリスで最後のひとりだった」とハグリッドは言う。ハグリッドの母が最後の巨人だったのか、それとも最後の巨人何人かのうちのひとりだったのか。
ハグリッドはマクシームを「俺と同類の半巨人」と言い、マクシームを怒らせてしまう。
ハリーはこの時初めて、巨人の存在と、魔法使いたちが巨人をどう思っているかを知った。

ロンもハリーもダンスパーティの間、パートナーのパチル姉妹をずいぶんぞんざいに扱った。自分からパートナーを頼んでおきながら、あまりにも失礼だと思う。もう7つや8つのこどもじゃないのだ。14歳にもなっているのだから、パートナーを頼んだ女性にはどう礼をつくすかを考えるべきだろう。とりわけロンの幼稚なふるまいは情けない。

パーティが終わったあと、セドリックがハリーを呼び止める。
「風呂にはいれ。卵をもっていけ」と言い、監督生専用の風呂の場所を教えてくれた。