ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第7章前半)

ポートキーを使って移動したハリーたちが着いたところは、霧深い荒れ地だった。
マグルに見られずに移動できるよう、わざわざ霧がよく発生する場所を選んだのかもしれない。
そこには、魔法省の役人がふたりいた。ひとりはアーサーとファーストネームで呼び合っているから、親しい仲なのだろう。彼は書類を見ながら、ウィーズリー家とディゴリー家のキャンプ地をそれぞれ指示した。

20分ほど歩いて、目的のキャンプ地についた。
管理人はマグルの男性だった。アーサーは料金を払おうとしたが、マグルのお金がよくわからず、ハリーに助けを求めた。
「どうもよくわからんな、こんな紙切れ……」とつぶやくアーサー。魔法界には紙幣というものがないのだ。
もしかすると、魔法界のお金はいわゆる「信用貨幣」ではなく、金属そのままの価値で流通しているのかもしれない。ガリオン、シックル、クヌートの換算値が、十進法でも十二進法でもなく半端なのは、そのせいだろうか。
そうだとすると、紙に金額を印刷しただけで貨幣として流通するという仕組みは、魔法族には理解不能なのかも。

マグルの管理人、ロバーツがアーサーたちの奇妙な行動を疑うので、別の役人が忘却術をかけにくる。
この役人との会話の中で、ウィーズリー家の台所で話題になっていたルード・バグマンの名前が出る。
ルードのことを話すアーサーのせりふに「なにしろ、自分がクィディッチのイギリス代表選手だったし」とあるのを見て、はてな?と思った。第5章で、ワールドカップイングランドウェールズスコットランドが別々のチームとして出場した話がでていたからだ。気になって原文をみると Englandで、「イギリス」ではなく「イングランド」と訳すべきところだ。
「賢者の石」のパズル以来、変だなと思うたびに原文を参照するのが習慣になってしまった。困った翻訳だ。

テントがたくさん立ち並んでいるところへ来た。普通のテントに混じって、変わった形の豪華なテントもある。「入り口に生きた孔雀が数羽つながれていた」と書かれている部分に違和感。孔雀はつないで飼う鳥じゃないのに… 蛇が音声でコミュニケーションしたり、孔雀がつながれていたり、原作者が動物をよく知らないことがわかる。
それはともかく「死の秘宝」のマルフォイ邸にも孔雀がいたから、孔雀はぜいたくの象徴らしい。リアル世界では、孔雀より白フクロウの方がずっと高価だと思うが、これはフィクションでしかも魔法界だから目くじらをたてるほどのことじゃない。

予約した場所には「うーいづり」と書かれていた。
原文では Weezly(正しい綴りはWeasley)だ。イギリス人の名前についてはよく知らないが、ウィーズリーという姓はマグル界にない姓で、だから管理人が間違えたという設定なのだろう。
おそらくダンブルドアもマグルにない姓だろうと思う。一方、ポッターやマクゴナガルはマグル界にも実在しそうだ。
スネイプはマグル界になさそうな印象の姓だが、しかし彼の父はマグルだったから、この姓も実在するのかな?

ふたつのテントを張って、みんなは中に入った。
ここでハリーが(読者も)おどろくことがふたつ。テントは小さいのに、中へ入ってみると広い。寝室・バスルーム・キッチンが揃っている。
ここまでは、魔法だからと納得できる。しかしもうひとつ不思議なのは、テントの中がフィッグばあさんの部屋と同じつくりで、家具も同じということだ。おまけに猫のにおいまでする。
フィッグばあさんと魔法界のつながりが明確になるのは「不死鳥の騎士団」になってからだが、ここですでに、彼女が魔法界と何かの関係があることが示される。このテントは同僚のパーキンスから借りた、とアーサーは言っていた。パーキンスはこのテントに魔法をかけて内部を大きくするとき、フィッグばあさんの部屋をそのままコピーしたのだ。
ただ、パーキンスとフィッグがどういう知り合いなのか、物語の最後まで出てこない。近い親戚だったのかもしれない。

水を汲みに行くためテント村を歩いて、ハリーは世界中に魔法使いがいることを実感する。
その中に「魔女裁判の町セーレムの魔女協会」と書かれた幕があった。アメリカに実在する魔女の町をここに登場させているのがおもしろい。
同級生のシェーマス・フィネガン、ディーン・トーマスにも会った。

水道のところへ来ると、花模様のネグリジェを来た老人と魔法省の役人が言い争いをしていた。
老人は「これをマグルの店で買った。マグルが着るものじゃろ」と言う。
役人は「それはマグルの女性が着るものだよ」と説明し、ズボンを差し出すが、老人は「わしゃ、そんなものは着んぞ」「わしゃ、大事なところにさわやかな風が通るのがいいんじゃ」と言い張る。
すると、魔法使いはズボンをはかないものなのか? 
「不死鳥の騎士団」のスネイプの記憶の中で、スネイプが逆さ吊りされ、下着がむき出しになるエピソードがあるが、ズボンをはかない習慣だからああなったのか?

このあと、ハリーたちはオリバー・ウッド、アーニー・マクミラン、チョウ・チャンに会う。
ウッドがプロチームの二軍に入ることが決まったと、ここでわかる。
ホグワーツでキャプテンをやっていても、プロでは二軍なのか。やはりプロの世界はきびしい。先の話だが、卒業後にプロ入りするジニーはよほど優秀ということになる。