ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第8章前半)

第8章の前半は、屋敷妖精ウィンキーとの出会い、そしてワールドカップ会場の描写が中心だ。

キャンプをしている森から競技場まで、歩いて二十分。
「ハリーには競技場を囲む黄金の壁のほんの一部しか見えなかったが…」と書かれているから、巨大な建物だ。一万人はいれる、とアーサーが説明する。甲子園球場と比べたら観客席の数がずいぶん少ないが、空中を飛び回るクィディッチでは、グラウンドの広さが野球場とは桁違いと思われるから、競技場そのものは甲子園よりずっと大きいに違いない。
魔法で建てるのだと思うが、具体的にはどうするのだろう? 杖のひとふりで巨大な建物が一瞬に出現するのだろうか? それともいくつかの部分に分けて順に建てていくのだろうか。
アーサーが「魔法省の特務隊五百人が、まる一年がかりで準備したのだ」と言っているから、やはり順序を踏んで、時間をかけて作るのだろう。

「この一年というもの、この近くまで来たマグルは、突然急用を思いついて慌てて引き返すことになった……気の毒に」
「気の毒に」を付け加えるところに、マグル好きアーサーの性格が表現されている。
「死の秘宝」の分霊箱探しの旅で何度も使われる「マグルよけ呪文」は、ここが初出だと思う。魔法使いは「マグルがはいれない空間」を設定できるのだ。
スクイブはどうだろう?
フィルチやフィッグが猫と意思疎通しているところを見ると、スクイブはマグルと同じではない。魔法は使えなくても、マグルにできないことがスクイブにはできる。それなら、マグルよけ呪文も突破できるのでは?
この答えは、最後まで読んでもわからないままだった。

ハリーたちは、最上階のボックス席に着く。
ハリーたちの席の後ろに、屋敷妖精が座っていた。ドビーかもしれないと声をかけて、別人とわかる。それがウィンキーだった。ウィンキーとドビーが知り合いだということ、ウィンキーは高いところは苦手だが主人のために席をとっているのだとわかる。
「そうか、あれが屋敷妖精なのか?」とロンがつぶやく。魔法界に育ちながら、屋敷妖精を見るのは初めてなのだ。
そこへファッジとブルガリアの大臣がやってくる。ハリーの傷跡に気づいたブルガリアの大臣の反応から、ハリーのことが国外でも知られているとわかる。ファッジはウィンキーを見て、クラウチの屋敷妖精だと言う。ウィンキーを見知っているのだ。

そこへマルフォイ一家がやってくる。
ナルシッサは、ここが初登場だ。ウィーズリー家やディゴリー家が母親を家に残してきたことで、わたしは主婦の立場を軽視されていると感じて不快だった。だから、マルフォイ家が母親に留守番をさせなかったことがうれしい。
「貴賓席の切符を手に入れるのに、何をお売りになりましたかな?」と嫌みを言うルシウス。
ここでちょっと気になった。アーサーは、ルードから切符をタダでもらったのだろうか。もしお金を払っているなら、ハリーとハーマイオニーは自分たちの分をアーサーに払っただろうか。

ウィンキーの主人が姿を現さないまま、試合開始の時間になる。
実はこの時、ウィンキーの隣には透明マントをかぶったクラウチJr.がいた。それがわかるのは、35章になってからだ。